朗読台本

【朗読台本】清々するわ【4分~8分】

【朗読台本】清々するわ【4分~8分】
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作者名 紺乃未色(こんのみいろ)
サイト名 フリー台本サイト「キャラコエ」
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紺乃未色
紺乃未色
語り手が最後のシーンで登場する構成です。

概要

カテゴリ 朗読(一人)
ジャンル 現実世界
時間(目安) 4分~8分
あらすじ メルは三年前に別れた元カレのミキトと再会する。
注意 このストーリーはフィクションです。実在する人物や団体、出来事などとは一切関係がありません。

その他、朗読におすすめの台本は、以下のページにまとめています。

紺乃未色
紺乃未色
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朗読におすすめ
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フリー台本『清々(せいせい)するわ』

 

1

夜の電車は前進する。
ガタンゴトンと、小気味よい音を立てて。

メルにとっては、そんな規則正しいリズムも、今は子守唄《こもりうた》なのかもしれない。
つり革に捕まり、うとうととしていたメルは、隣に突然あらわれた人影にはっとする。

「なあ」
男の低い声。

メルの長いピアスがびくりと揺れる。質《たち》の悪いナンパだとでも思ったのだろう。なにせ、彼女はとっても美しく人目を惹くから。

「ミキト……」

「よーう。三年ぶり? だな」
ミキトはへらッとした声で言った。

呂律《ろれつ》が怪しい。
アルコールに飲まれているようにも見える。

「しっ。電車の中よ。声がうるさいわ」
メルがたしなめる。
彼女は礼儀正しい女性だ。人の迷惑になることや、誰かを悲しませることは決してしない。
ルックスが良くて、明るくて、性格も良い。
いわゆる、みんなから好かれるタイプ。

……それがメルの自己評価だった。

2

「あはは。相変《あいか》わらず、まじめちゃんだな。元気そうだねえ」

「……あなたねえ、よく私に話しかけられるわね」
「え、なんで?」
「忘れたとはいわせないわよ。二股かけておいて」

ミキトはメルの元カレだ。

別れの原因は、ミキトが会社の後輩と浮気したこと。
メルはスマホからその事実を知ったとき、ブチ切れ、一方的に別れを告げたらしい。
そんな噂《うわさ》が地元にしばらく流れていた。

「ああ、そんなこともあったあったー」

「そんなことですって??!!」
メルの声が大きくなる。

「しーっ」
ミキトが、冗談めかしてそう言った。

「ほんっと、腹が立つわね。でも、もうどうでもいいわ。あなたなんかと別れて正解よ。ふふん、これを見なさい」

メルは、そう言いながら、ミキトに左手を見せつける。
キラリと薬指が光った。

「へえ。言うねえ」
ミキトは気にする様子もみせず、軽い口調で言った。

彼はいつもこんな感じだ。
でも、その飄々《ひょうひょう》とした雰囲気に、女性は不思議と吸い寄せられてしまう。

3

「はあ。なーんか、イヤな思い出が蘇《よみがえ》ってきたわ」
メルがこめかみを押さえる。

「ふうん。あ、マナミのこととか?」
ミキトが尋ねる。

「違う、あなたのことよ! マナミのことは、忘れたことなんてないわよ。……悪かったなって思ってるし」

メルの声が小さくなる。

「へえ。ウケるー。もう友達じゃなくなってるくせに」
ミキトが馬鹿にしたように笑った。

メルは何かを言いかけ、ぐっと堪える。
それから一言だけ、吐き捨てた。
「うるさい。あなたのせいでもあるんだから」

もともと、ミキトが付き合っていたのは、メルの友人のマナミだった。

ところが、はじめて顔を合わせた日、二人は妙に熱を帯びた視線を絡ませた。
その後、まるで自然な流れだとでもいうかのように、メルとミキトは関係を持ち、メルとマナミは疎遠《そえん》になったのだ。

正確には、メルが一方的にマナミを避けまくった。
友人の彼を奪ったのだから無理もないだろう。

「ふはっ! あれってほんとなんだ。自分がやったことが返ってくるのって」

ミキトはやけに挑発《ちょうはつ》じみた口調で言った。
先程、メルに指輪を見せられながら、別れて正解だといわれたことに腹を立てているのかもしれない。

「あなたね、黙って聞いてると好き勝手言って!」

「まあでも、俺からすると、メルもマナミも似たり寄ったりだったな。見た目は可愛いけど、長く付き合いたいと思わないっていうか……。ああ、そうそう。外見だけのつまんない女って感じ……」

バチンッ!!!!!

電車内に乾《かわ》いた音が響き渡る。

4

「なっ」

ミキトは、手のひらで頬《ほお》を押さえ、恋愛ドラマで見るような、お約束のしぐさをする。

ぶったのは、メルじゃない。

「久しぶり」
《《わたし》》は手にじんとした痛みを感じながら、にっこり微笑む。

「マナミ……。いつから?」
メルが尋ねる。

「もちろん、最初から。すぐ後ろに立ってたのに、気づかなかったんだ? 電車のガラスって、けっこう反射して映るんだよね」

「そ、そう」
メルは、気まずそうに左手を腰の後ろへと隠す。

さすがのミキトも、思いがけない元カノの突然の登場に、口をぱくぱくさせている。

そんな、二人の様子を見ると、おかしくなった。
今までずっと、二人になめられているんだって思ってたけど、今の立場じゃまるで逆。

こっちの方が優位に立ったみたい。
ちょっぴりいい気分かも。

「じゃ、さようなら。懐かしいお二人さん」
電車が停車し、扉が開く。

わたしはイヤな記憶を車内に置き去りにして、夜風が心地良いホームへと降りた。

さて、彼の待つ家へ帰ろう。

空はじゃっかん曇っている。
でも、わたしの気持ちはどこまでも清々していた。

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