朗読台本

【朗読台本】ロールプレイ【10分~15分】

【朗読台本】ロールプレイ【10分】
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ー表記内容ー

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作者名 紺乃未色(こんのみいろ)
サイト名 フリー台本サイト「キャラコエ」
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紺乃未色
紺乃未色
テーマは「一人二役」です。

概要

カテゴリ 朗読(一人)
ジャンル 現実世界
時間(目安) 10分~15分
あらすじ 主人公は心が疲れると、友人のエレナと夜の街へとくりだすのだが……。
注意 このストーリーはフィクションです。実在する人物や団体、出来事などとは一切関係がありません。

その他、朗読におすすめの台本は、以下のページにまとめています。

紺乃未色
紺乃未色
ぜひご覧くださいませ。
朗読におすすめ
朗読におすすめのフリー台本【短編・長編・中編】朗読に使えるフリー台本(原稿)です。短編・長編・中編ごとにおすすめを選びました。YoutubeなどのSNSへのアップや、朗読会、声の練習など幅広い目的でお使いいただけます。...

フリー台本『ロールプレイ』

いつだって、立場やら、役割やらを理解し、飲み込み、その通りにふるまう。

わざとじゃなくって、体が勝手にそうなってしまう。

正直、しんどくもなるよね。
こういう人、わたし以外にもたくさんいるんじゃないかな。

「カレンちゃん? かなり優秀だよ。うちの塾でも期待している子の一人さ」

「ああ、隣のクラスの子? 目立たないけど、とくに害はないよねえ。一年のとき、同じクラスだったけど、成績も普通くらいだったと思う」

「ああ。英会話スクールが一緒だよ? すっごく明るい子だよね?」

「ちょっと抜けてるとこあるけど、そこがいいんだよ。わかるか? 俺が見ててあげなきゃって思っちまうから」

「お姉ちゃんってすっごく頼りになるのよね。一緒にいると心強いもん」

「あそこの家のお嬢さん? 大人しいけど、ちゃんと挨拶してくれるいい子だよ」

どれも、おんなじ人をあらわす言葉なんだから笑える。

でもね、わたしのことをまわりに尋ねたら、きっと、こんな感じの声が返ってくると思うんだ。

 

いろんな役を演じていると、たまにすっごく疲れるときがある。

そんなとき、わたしは友人のエレナと夜の街へくり出すんだ。

目がちかちかするネオン、耳に悪そうな騒々しさ、すれ違う人から漂ってくるアルコールの匂いなんかが、リアルな現実を忘れさせてくれる。

うっかり見上げると、「わたしってば疲れているな」と思わずにはいられない星々も、賑やかな街の中では、うっすらと闇に滲む、ただのちりと化してくれる。

わたしは、夜の街のそういうところが気に入っているのかもしれない。

 

「それでさ、塾の先生ったら、すんごいプレッシャーかけてくるわけ。「お前はK大学確実だな」とか言っちゃってさ。もう、ほんとイヤになるわ」

わたしは、ぶうぶうと愚痴を吐き出した。

「まあまあ。それだけ、カレンに期待してるってことでしょう」
エレナが言った。

ひゅうっと秋の風が吹いてきて、彼女の黒い髪がサラサラなびく。

「そうかもだけどさ。ただでさえ、親からも勉強のこと、いろいろ聞かれて、ストレスだらけの時期なのに……。あ、そうだ! わたしカイトと別れたんだ」

「え? どうして?」

エレナの丸い瞳がまっすぐにこちらへと向けられた。

「最近、あんまり、遊んでくれないからだってさ。ふられちゃったんだ」

「カレンはそれでいいの?」
エレナに聞かれ、わたしは押し黙った。

「……そりゃ、よくないけどさ、でも勉強も大事だし。できれば両立したいよ。わたしだってさ」

「それ、カイト君にちゃんと伝えたの?」

「……言ってない」

「ダメねえ。はい! 明日、直接伝えること! いい?」

「……はーい」
わたしはしぶしぶうなずいた。

エレナと話していると、ぐちゃぐちゃになっている感情が、ゆっくりと整理されていく。

こうしたいんだ、ああしたいんだ、っていう自分の本当の気持ちがクリアになる感じ。

「あ! ここ入るね」
わたしは、コンビニの前で立ち止まった。

「オッケー」
エレナが答える。

コンビニの入り口をくぐり、コピー機の前へと足を進める。

たまに、メンテナンス中になっていることがあるけれど、今は大丈夫らしい。

 

わたしは、エレナをコイン投入口の上へと座らせた。

 

「ちょっと、待っててね」

背中からリュックサックを下ろし、A4サイズのファイルを取り出す。

そのなかから、英語の練習問題の解答用紙をひっぱり出して、コピー機にセットした。

次に、画面を指でタッチして、サイズやら部数を選んでいく。

我ながら、慣れたものだ。

コインの投入口に十円玉を五枚差し込み、スタートボタンを押すと、コピー機は、パシュンパシュンと音を鳴らしながら、五枚の紙を面倒臭そうに吐き出した。

 

「お待たせ」

わたしはエレナに向かって声を掛けた。

「もういいの?」
エレナが尋ねる。

「うん。ちゃんとできた。帰ろう」
近くにいる人たちが、距離を取り、こちらをじろじろと見てくるのは、いつものことだ。

唯一、レジにいるベテランのスタッフだけが、なにくわぬ顔で、チルド弁当らしきものを温めている。

「カレン、あんまり、長く外にはいれないのね」
家路につきながら、エレナがつぶやく。

「親に怪しまれちゃうから……。「今すぐ、解答用紙をコピーしに行きたいの!」って駄々こねるので精いっぱい」

「悲しいわね。だけど、まだ高校生だものね。心配にもなるわよ」

「もうしばらくのしんぼうかな。まあ、こうやって十五分くらい、夜の街で、エレナとお話できるだけでも、わたしにとっては、癒しなんだけどね」

「そう言ってもらえると、とっても嬉しいわ」
エレナが言った。

わたしは微笑み、それからゴルフボールほどの小さな頭を撫でた。

「じゃあ、いつもみたいに隠れててね」

「わかったわ」
わたしはエレナをリュックサックの中へと押し込んだ。

きっちりとリュックサックを背負いなおし、家の扉を開けると、目をぱちくりさせている妹と鉢合わせた。

「あ、お姉ちゃん。でかけてたの?」

「ん? すぐそこのコンビニまで。ちょっと、コピーしたくてさ」

「そうなんだ。あ、数学の宿題でさ、わかんないところあるの、教えてくれない?」

「うん」

「さっすがお姉ちゃん! 助かるわ。後で部屋に行くね」

妹はそう言って、またたく間に去って行った。

わたしはため息を吐いた。
まだ、今日のロールプレイングは終わらないみたいだ。

「エレナ、ごめんね。このなか狭いよね」

自室へと入り、リュックサックから、ただの小さな人形を取り出す。

「問題ないわ。さあ、カレン。あたしをいつもの場所へと返してちょうだい」

わたしは、「うん」と答えて、クローゼットの奥へとエレナを仕舞った。

しばらくすると、部屋の扉がノックされた。
きっと、妹だ。

わたしはすぐさま頼れるお姉ちゃんモードへと切り替える。

「あれ? 今、誰かと電話してた?」

「ううん。聞き間違いじゃない?」

妹は「そうかなあ」と言いながら、首をかしげた。

「気のせい、気のせい。それで、わからないところって?」

わたしはそう言って、笑いながら、心の中でひっそり泣いた。

誰かの理想を演じるたびに、魂がごりごり削られていくみたいだ。

なんとかしなきゃと思う気持ちとは裏腹に、体は勝手に名演技をはじめてしまうんだから困っちゃう。

正直、勘弁してくれって感じ。
わたしは助けを求めるようにクローゼットへと視線をやった。

艶やかな木材の向こう側から「大丈夫」と声が聞こえてきたような気がして、高ぶった気持ちがいくらか落ち着いた。

「お姉ちゃん? なにか言った?」
「え? なにも」
「そう? 疲れてるんじゃないの? 最近、なんかお姉ちゃん、変だもん」

「大丈夫」

まだ、平気。
自分のために、何かの形になりきることは、これっぽっちもイヤじゃないから。