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ー表記内容ー
台本名 | 当ページのタイトル |
作者名 | 紺乃未色(こんのみいろ) |
サイト名 | フリー台本サイト「キャラコエ」 |
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概要
カテゴリ | 朗読(一人) |
---|---|
ジャンル | 不思議・ちょっぴりホラー? |
時間(目安) | 5分~10分 |
あらすじ | 彼にうんざりしたリサは、ついに家を出ることを決意したのだが……。 |
注意 | このストーリーはフィクションです。実在する人物や団体、出来事などとは一切関係がありません。 |
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フリー台本『うんざりしたの』
わたし、うんざりしたの。
お仕事が上手くいかないからって、鉛筆でお腹をぐりぐり刺してくるなんて最低よ。
道路工事の音がうるさいからって、当てつけのように腕を引っ張って、壁に叩きつけてくるのも、もうたくさん。
いつもは黙っていたけれど、さすがに我慢ならないわ。
だから、もうこの家を出て行こうと思ったの。
でもね、こっそり、窓の外からリビングの様子を見ていたら、ちょっとびっくりしたわ。
「リサ?」
彼ったら、わたしの名前を、何度も呼ぶんだもの。
さすがに、ずっと傍にいたわたしがいなくなったら、切なくはなるのかもしれないわ。
でもね、ここで戻ってあげたら、意味がないの。
わたしは決めたの。
こんなひどいことをする人を、どうにかしてやるって!
そんな風に、思っていたら、玄関の方で物音がしたわ。
「パパ! ただいまー。今日は早いんだね」
リョウの声よ。
「ああ、そうだ。今日は、午後はお休みの日なんだ」
「そうなんだ! あ! ねえ、ママは?」
「それが、見当たらないんだ。そこらへんにいなかった?」
「えー? 見てないよ」
「そうか。まあ、電気もつけっぱなしだったし、そのうち、帰ってくるだろう」
「うん!」
「学校はどうだった? 今日、算数の小テストだったんだろう?」
「パパのおかげで、良い感じ。もしかしたら、百点かも」
「それはすごいな」
「えへへ」
リョウは少し顔を赤らめて、ランドセルを置くと、ぱたぱたと愛らしい足音を立ててリビングから出て行ったわ。
きっと、手を洗いに行ったのよ。
あの子は賢くて、強くて、優しいの。
誰に対しても、思いやりを持って接している。
もちろん、わたしのことも大切にしてくれるのよ。
「お別れ、言えなくてごめんね」
思わず、呟いてしまったわ。
ただ、彼はリョウには優しいから、決して、暴力をふるうなんてことはないはずよ。
それだけは、安心できるわ。
さて、そろそろね。
「さようなら」
わたし、小さく呟いたの。
ちょうどそのとき、もう一つの声が、リビングから聞こえてきたわ。
ちょっぴり高くて可愛らしい声。
「あら? 帰ってたのね」
「ママ!」
「おい、ユイ。どこ行ってたんだ?」
「ベランダよ。いいお天気だから洗濯もの、干してたの」
わたし、ユイさんのことは、彼とおんなじくらい好きじゃないの。
だって、扱いが酷いのよ。
こないだだって、彼とケンカをしたからって、わたしをボールのようにして、投げつけたの。
彼は、ちゃんとキャッチしてくれたのだけど、今度は、ユイさんに向かって、思いっきりわたしを叩きつけたのよ。
本当に、痛かったんだから!
その後も、冷たい床に落ちたまま放っておかれて、あげくの果てに、寝ぼけたユイさんに踏みつけられる始末。
まったく、冗談じゃないわ。
思い出すと、よけいにむしゃくしゃしてくるわね。
こういうときは、明るい未来のことを考えましょう。
聞いてくださるかしら?
ひとつ、決めているのは、こんな理不尽なことをする人たちを、こらしめてやるってこと。
キッチンから、果物ナイフもいただいてきたわ。
昨日、彼が研いでいたばかりだから、きっとよく切れるわよ。
これを使いましょう。
ほら! 見てごらんなさい! 刃が鈍く光っているわ。
うん、良い感じね。
胸元へと飛び込み、柔らかな首をぐさり、といったところかしら。
こういうのって、シミュレーションが大切よ。
「あ! ユイ。リ……俺のクマのぬいぐるみしらないか?」
彼の声だわ。
ここよ! わたし、ここにいるわ。
もう、すべて手遅れだけれど……。
「え? あの小汚いやつ? 見てないわよ」
まあ、ユイさんったら。
「……そうか」
「ないの?」
「ああ」
「いいじゃない。小学校のときから持ってるからって、さすがに愛着ありすぎよ。ボロボロだったし、あなたが捨てないなら、そのうち、あたしが処分しようかと思っていたもの」
「え……」
「ひょっとして、その年でショックでも受けてるの?」
「……まさか」
わたし、わかってはいたけど、とっても悲しい気持ちだわ。
ぬいぐるみの仲間たちのためにも、すぐにでも、人間たちをどうにかしてやらなきゃダメね!
ええ!
そうしましょう。
さて……。すぐにでも、リビングに飛び込みたいところなのだけれど、まずは、目撃者を消さなきゃならないようね。
ねえ!
そこで、さっきから、話を聞いているあなた。
そう、あなたのことよ。
あなたもどうせ、こう思ったんでしょう?
なんだ、ぬいぐるみだったんだって。
完